コーヒーの薬効

(ヤギ飼いのカルディ)

ナイル川流域、またはアビシニアのアラビア人ヤギ飼い

ある日おとなしかったヤギたちが子どものように跳ね回るのをみてカルディはそれがヤギたちが好んで食べていた赤い実のせいであることに気がついた。

カルディは気分が落ち込んでいたため少しでも気が晴れるならと試しにこの実を食べてみた。するとすばらしく効果があり、彼はそれまでの悩みをすっかり忘れてアラビアで一番幸せなヤギ飼いになった。

そしてヤギが踊りだすと彼もその輪に加わり一緒に楽しく踊り回ったのだった。

ある日一人の僧が通りかかった。踊り回るヤギを見て彼はカルディにその理由をたずねた。そしてそのめずらしい木の実のことを聞くと思った。彼には悩みがあった。いつも拝礼の最中に眠り込んでしまうのである。これは間違いなくマホメッドが私に眠気覚ましを与えてくださっている。

この僧はヤギ飼いの食べ方に工夫を加え乾燥して煮出すことを発明した。これが今日のコーヒーの起源である。そしてその飲み物は瞬く間にその国の僧の間で広まっていった。

(シェーク・オマール)

僧侶のシェーク・オマールが山の中で木のみを食べてさえずる小鳥を見て、木のみを見つけ食べてみたところとても元気になった。そしてその種を煮出して薬としてつかった。という話である。

コーヒーの起源ということで有名な説話である。

古くから人々は野生のコーヒーの実を集めていた。発酵させてアルコール飲料にしたり、葉を噛んだり茶のようなものを作って飲んだりした。そしてついには種子を取り出しそれを炒って、更には挽いて粉にしエキスを抽出する技を編み出した。その香味も素晴らしいものであるが、物語に共通するポイントはその薬効性であろう。コーヒーの薬効の描写を見ると疲労回復、気分の高揚、眠気覚ましの覚醒効果、などがあげられる。コーヒーの成分中のカフェインの薬効と思われるが、覚める成分が人間にとても有効である。食味、薬効2つの側面から独特の植物であるコーヒーの木、その種子、逸話が世界に伝えられるのも頷けるところである。

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